彼はそれほどマメな人ではなく、
記録として残るほど、
あたしの心に響く言葉をくれなかったけど、
時々、やっぱりくれてた。


電車乗りながら、
そんなことを思い出したりして。
鼻が痛いっていうか、
泣きそうになる。


出っ歯なあたしを、
下から見上げて、
「下から見るとすごい出っ歯だねーっ」て言った。
気にしてるから、
「矯正したいよー」って言ったら、
「下から見ることは俺だけだから
 別に気にしなくても平気だよ」
って。

オイオイ、
そりゃ、この先わからないぜ。
って、
思ってたけど。


就職するにしても、
実家に帰る方向だった。
あたしは、
今の仕事のまま、
彼が仕事に就く時は、
入社3年目だろう。
「遠距離だねー」って言ったら、
「いっしょに来る?」って言われた。

ましてや、そんな保証、
どこにあるんだって、
流して聞いてたけど。

でも、
いつからか、
彼は
「好きだよ」とは言うけど、
「愛してる」とは、
言ってくれなかった。
本当に心からなんて、
よっぽど深い気持じゃなくちゃ、
言わないし、
いつも言われても、
重たいけど。

あたしが聞きたかったのは、
「愛してる」だった。

お泊りしたとき、
ときどき、
半分寝ぼけながら、
あたしを横に見つけると、
キスをしてくれた。
それが、
本当に大好きだった。
何気ない行動に、
ただ、安心感があって、
そうされることが、
本当に好きだった。


一緒に過ごしてた、
その時間は、
長いか、短いか、
わからないのに、
あれほど、嫌な言葉も、
汚い言葉も、
聞いてたはずなのに、
心に浮かぶのは、
自分が幸せになる記憶ばかりで、
捨てられない記憶で、

痛くて嫌になる。

今だから、
これくらいの傷ですんだのかもしれない。
月を重ねて、
もっともっと一緒にいたら、
もっともっと辛い、
別れだったかもしれない。
でもやっぱり、
会いたい。
たった一人の、
あなたに会いたい。

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